2010年6月9日水曜日

高木浩光@自宅の日記 - 白浜サイバー犯罪シンポジウムに行ってきた2010

スライドの「警察庁児童ポルノ根絶行動計画」に、Winny等での児童ポルノ流通への対策が書かれていない。
私は個人でWinnyネットワークの観測をしているが、一人で何千個もの児童ポルノファイルを公開状態にして毎日24時間Winnyを延々稼働させている輩が何人もいるのを見た。これらを止めなければ、児童ポルノ流通の防止にならない。
Webのブロッキングは、表現の自由との衝突や検閲の問題、ISPへの責任負担の押しつけなどこれだけ厄介な問題が様々横たわっているところに、無理をしながら進めようとしているが、日本においてはWinny等こそが児童ポルノ流通の主戦場であって、そこを取り組まないでWebのブロッキングをしてもほとんど効果がない。
警察庁はそこの事実を把握しているのか。Winny以外のP2Pでの検挙例があるのは承知しているが、一次放流者でないWinnyでの共有者、つまり「Cache」で漫然と共有状態を続けている者が、児童ポルノ罪で起訴された事例は1件もない。(2010年5月3日読売新聞朝刊より。)
一次放流者を検挙したところで、Winny等の構造上、それ以外の共有者らを検挙しない限り、児童ポルノ流通防止としては実質全く対策になっていない。最初に誰が流したかわからない児童ポルノが、何年も前からずっと継続して共有状態になっている。そこにメスを入れないと、日本における流通は全く止まらない。
一次放流者以外の共有者を起訴するための法的な考え方、つまり故意の立証ができるのかできないのかの整理を警察庁はやっているのか。
Winnyの登場からもう8年も経っている。冒頭でおっしゃったように本気で児童ポルノが人権侵害の著しく絶対に許せないものとお考えなら、海外と違ってWinny型のファイル共有ソフトが故意の立証が難しくて起訴が困難な状況になっている点、そこにメスを入れていただきたい。
Webブロッキングは的外れですよ、ということ。少なくとも児童ポルノ流通防止の対策としては。その他の目的があるのなら話は別だけど。

0 件のコメント: